Interview 011

2023/7/28

株式会社ユーグレナ
阿閉 耕平 さん
ATSUJI Kohei
株式会社ユーグレナ
阿閉 耕平さん
ATSUJI Kohei
必要なのは「正解のない問いを立て続ける力」。
現状に対する問いを立て続け、そこから出てくる仮説を元に、
ビジョンを描ける力を身につけてほしい。
岡本

今月のインタビューは、株式会社ユーグレナより阿閉耕平さんにお越しいただいています。
阿閉さん、よろしくお願いします。

阿閉

よろしくお願いいたします。

岡本

阿閉さんとは、お会いするのが3年ぶりぐらいですが、その間の研究の内容も含めて、今日はいろいろと深掘りさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

というわけで、まずですね、阿閉さんの自己紹介を皆さんにしていただければと思います。

阿閉

はい。阿閉耕平と申します。
私は、株式会社ユーグレナのR&D カンパニーのR&D企画室という部署に所属しております。

私は、ユーグレナ社に修士を卒業して新卒で入社し、そこから6年くらい研究職として仕事をしていました。具体的には、新しい「ユーグレナ(ミドリムシ)」を探索すること、つまり、より性能の良いユーグレナを見つけ、作り出すといったことをメインテーマとする研究です。そのほかにも色々なことをやってきました。
現在は、R&D企画室という部署に異動しまして、引き続き色々なことにチャレンジしています。
研究職の仲間がより働きやすく、そして研究がより効率よく進むように枠組みを整え、サポートをする立場として日々仕事に励んでいます。

岡本

ありがとうございます。
おそらく、今、僕も含めて、「新しいユーグレナ(ミドリムシ)」、というキーワードに、???となったと思うのですが、新たなユーグレナというのは、これは、人工的に作り出している?わけですよね。

阿閉

そうですね、その意味は二つあります。
この世界のどこかに存在している、自然の中にいる「まだ見ぬ」新しいユーグレナを探す、見つけ出すというのが一つ。もう一つが、そうした野生、自然から得られた良いユーグレナを、ゲノム編集と呼ばれる技術を使って、ユーグレナの可能性をより深く堀り下げるという研究をしていました。

岡本

面白いですね。
ちなみに、世界のまだ見ぬユーグレナというのは、おそらくまだたくさんいるのだと思いますが、それを探すということは、フィールドワークとして現地に行くわけですよね?

阿閉

はい。実際に日本国内の様々な地域に行って水のサンプルを採り、その中に新しいユーグレナがいないかどうかを探したり、理化学研究所と共同で「みんなのミドリムシプロジェクト」を実施していました。

例えばクラウドファンディングという言葉に聞き覚えがある方もいらっしゃるかもしれませんが、実現したいことに対して賛同をもらえたら、資金の応援をいただいて、成果をお収めするということが基本的な枠組みですよね。それに対して、「みんなのミドリムシプロジェクト」では、いいなと思ってくれた方に実際にプロジェクトに参加いただくんです。何をするのかというと、賛同してくださった方の身の回りにある環境で水を採取し、送って頂きました。

私たち数人の研究者が、直接全国の水を採取することは難しいので、賛同してくださる皆さんの家の周りにある水に新しいユーグレナがいないか探すという、そんなプロジェクトです。

岡本

面白いですね!
つまり、お金の代わりに水をくれ、ということですね!
ちなみにそれは、もちろんたくさん集まったと思うのですが、実際にその中から新たなユーグレナを発見するに至ったんですか?

阿閉

はい。たくさんのサンプルをいただきまして、新種ではないのですが遺伝子の異なるユーグレナの新しい株を見つけることができました。

岡本

ちなみ、研究者の方ならではだと思うのですが、新しいユーグレナが見つかったときの興奮というのは、顕微鏡越しだとどんなふうになるものですか?

阿閉

私が研究をしていて、一番楽しいなと思う要素がありまして。
実は、顕微鏡をのぞいて、ユーグレナを見つけることが楽しいかというと、そこに一番の楽しさがあるわけではないんですね。

顕微鏡をのぞいてユーグレナがいるかいないかは見てすぐ判別がつくのですが、顕微鏡で見えるユーグレナが今までに見つかっているユーグレナか、そうでないのかというのは、顕微鏡で見ただけではわからないんです。
ユーグレナの遺伝子を読み解いて、系統樹と呼ばれる今までに見つかっているユーグレナと、新しく見つかったユーグレナの遺伝子がどれぐらい違うのか、どれぐらい一緒なのかというのを並べ直したときに、今まで見つかっているユーグレナと違うということがわかってきたときに、研究をしていて一番楽しいと感じます。

岡本

ワクワクしますね!

藻類との出会いは、高校生の頃に読んだ一冊の本がきっかけ。
目に見えないような小さな藻が、30億年もの間、
いかに地球環境に影響を与え、これからも与えていくのかを知り、
視界が広がりました。

岡本

ちなみに、一般的な研究のイメージというと、顕微鏡をずっとのぞいている時間が長いんじゃないかと思いがちですが、決してそれだけではないわけですよね。

阿閉

そうですね。ただ顕微鏡と向き合う時間も、私の中では非常に大事にしています。大学の先生から、とにかく日々、自分の扱っている生き物を直接目で観察することを大事にしなさいというふうに教えていただきました。

同じようにユーグレナを培養していても、わずかな違いや変化があって、これはなかなか気づくことができないような変化なんですけれども、毎日毎日見ていると、違いや変化に気づくことができるんです。
その気づきが、また新しい研究や成果に繋がるという経験も実際にいろいろありました。

岡本

ずっと観察をされていく中で、ユーグレナの種というものが相当あると思うのですが…。

阿閉

そうですね、常に新しいユーグレナが見つかったりしますし、新しいユーグレナだと思われたものが実はすでに発見されている種と同じだよねというような変遷があるので、具体的に何種と定めるのは難しくて、諸説はあるんですけれども100以上にもなるかもしれません。

岡本

100ですか、たくさんいますね!
それだけの種に対して、新しいものかどうか、ゲノム分析をしながら、見極めていく過程では、当然、まずは見たことがあるものかそうじゃないものかとか、その後もゲノム分析をして、あれと同じだ、いや見たことがないなどと話も盛り上がっていくと思うんですが、それらの過程では、研究者同士での意見のぶつかり合いみたいなことは出てきますか?

阿閉

そうですね、事実としてあるものに対して、どのように仮説を立てるかであったり、その後の検証の方法について当然誰もが同じ見解になるというわけではないので、意見が対立するというより、異なる意見を持つことはありますね。

岡本

そうか、事実は事実としても仮説と検証方法はさまざまなアプローチが考えられるんですね。興味深いです。

ちなみに、そもそも顕微鏡で見なければ見られないこの小さなユーグレナについて、阿閉さんご自身がなぜこの領域に興味を持たれたのかが非常に気になるのですが、このユーグレナとの出会いや、そこから没入して研究を続けてこられた経緯について、少し教えていただけると嬉しいなと思います。

阿閉

はい。私が藻類と出会ったのは、高校生の時でした。
2年生ぐらいのときに、当時の担任が生物の先生で、面白い本があるから読んでみたらと手渡されたのが、「藻類30億年の自然史」というタイトルの本でした。タイトルにぴったりな非常に分厚い本です。
目に見えないような小さな小さな藻が誕生して30億年ものあいだ、いかに地球環境や我々に影響を与えてきたのか、そしてこれからも与えていくのかということが体系だってまとめられており、当時の私は、その本にとても感銘を受けました。

それまで、藻類なんていうものは、緑色のなんかモヤモヤしたもの?みたいなイメージとか、はたまた学校の授業で、ユーグレナ(ミドリムシ)とかミカヅキモとか、そういうものを見るぐらいのレベル感だったのが、もう本当に視界が広がったように感じました。

そして感銘を受けた私は、その分野に、この本を書いた先生に教えを請いたいなと思ったので、それが私の大学選びの基準になりました。「藻類30億年の自然史」を書かれた先生がいらっしゃる大学に行こうと。 私が大学に入るタイミングには、本を書かれた先生は教授職ではあられたんですけども、もう研究室で学生を採っていらっしゃらなかったので、先生の弟子にあたる方の研究室に入り、学生時代は藻類に関して非常に楽しく研究をしました。

岡本

素敵なきっかけですね!
1冊の書籍との出会いから、自分でやりたいことということを見つけて、大学選択も、偏差値どうこうとかではなく、学びたい分野で、学びたい人がいる大学を見つけて進学されて、その分野を突き詰めて、まさにその領域で、今、ユーグレナ社で仕事としても取り組んでいかれているわけで、流れとしては、とても自然な感じがしますが、すごいことだと思います。

バイオマスの活用において「ユーグレナ」に一定の可能性を見ていますが、
目的は社会問題の解決であり、「ユーグレナ」で解決することが
目的にならないようにというのが重要な考え方です。

岡本

藻類の研究と言っても、いろいろなアプローチがあると思いますが、ユーグレナを社会の様々な分野に活用させていくバイオテクノロジー企業であるユーグレナ社で活躍される道を選ばれたということは、阿閉さんご自身が、藻類の可能性を形にすることに興味を持たれたのだと思いますし、そういった藻類の可能性というのは、食品などのヘルスケアやエネルギーなど、今ユーグレナ社が取り組まれているところだと思うのですが、
阿閉さんが企業に入って、研究職から現在のR&D企画室に至るまでの流れの中で、今はまさにどんどんその重要性が高まっているように感じます。

ユーグレナの油脂を原料の一部に使ったバイオ燃料で飛行機を飛ばしたことも、ニュースで話題になりましたし、食料として、試食させていただいたのが非常に懐かしいですが、バングラデシュで子どもたちに配布しているユーグレナクッキーも今後は世界規模で需要があると思いますし、SDGsの文脈で環境問題などを考えたときに、エネルギーと食料とはやはり2大ファクトだと思っていて、この両方に取り組んで結果を出されているのが、ユーグレナ社の強みだと僕は勝手ながら思っておりまして、

逆に言うと、やはりこの領域を制していくものが今から世の中のソーシャルイノベーションを進めていく企業だと思っているので、ユーグレナ社はその両方を持っているということが本当にすごいことだと思っています。

そこで、阿閉さんご自身が、この領域についての重要性や、今からの発展性がどのようになっていくと考えられているのか、お伺いしたいなと思います。

阿閉

はい、ありがとうございます。
弊社が研究開発の説明をする際に使っている考え方として、「バイオマスの5F」というものがあります。

バイオマスの5F

重量単価が高い順にバイオマスを活用していくことによって、その生産効率であったりとか、製造技術であったり、生産規模というものを拡大しながら、よりコモディティに、単価は低いけれども、より市場規模の大きい分野に、領域を展開していくという考え方です。

お米で例えますと、ご飯にするのが一番高く、繊維として使うならばわらじ、飼料として、稲わら、さらには堆肥として稲わらを畑や田んぼにすき込んで、最終的にはたき火の材料として燃やすなどの使い方がある中で、ユーグレナも、おっしゃっていただいた通り、食料と燃料のほかに、繊維、飼料、肥料という使い方があります。

現在、弊社で一番売上が立っているのは、この食料の文脈です。
バイオマスの5Fの戦略に従えば、上から進めていくのは順当な流れですね。繊維、飼料、肥料、燃料は、テスト販売をしたり、実証研究をしたり、と様々な活動をしていますが、燃料が一番この順番でいうと難しいんですね。
難しいからこそ、常に意識、イメージして進めなければ、いつまでたってもたどり着けない。それぐらい難しいものなんです。

バイオ燃料は、今後マレーシアに商業用の製造プラントを作るというプロジェクトを進めているところですが、燃料を絶対にやるんだという意識のもとに進めてきたからこそ、社外の皆様からも認知いただいて、一定の成果が伴ってきつつあるのだと思います。

岡本

今、お伺いしていて、この5Fのものは、まさしくその通りだと感じまして、しかも食料から下の燃料という難しいものの両側を押さえながら、間を埋めてくという戦略がすごく面白いし、合理的だなと思って見ていたんですけど、
一方で、食料分野の研究領域と、燃料分野の研究領域というのは、何というか、知識として持つべきもの、持っているものは、全く違うものなんでしょうか?

阿閉

そうですね。ベースにあるバイオマスを作るといった考え方については同じく共通する部分はありつつも、それぞれ全く違う分野、要素が必要となります。

それは食料と燃料で、5Fの中の段階が大きく離れているからというわけではなくて、段階的に隣り合う食料と繊維も、全く別の分野なので、大きな違いがありますし、それぞれの段ごとに全く違う要素があります。

岡本

なるほど。
それぞれのレイヤーの中での難しさというものがすごくありそうですが、ちなみに、一研究者としての阿閉さんからご覧になった私見として、ユーグレナの活用の難しさについて、一番難しく感じていらっしゃるのはどのようなところでしょうか?

おそらく、ものすごく幅が広いと思いますし、研究の難しさともあると思うのですが、発展性もすごく大きい領域だと思うんですね。
食料も燃料も、人間としては非常に必要なものをですし、食料を得るためにも肥料は必要ですし、今のエネルギー不足とか、人口の問題も、日本国内では減少し、世界規模では増えていくという中で、人が増えれば当然、食料も、移動手段としてのエネルギー、もしくは家庭用燃料としてのエネルギーも必要になってくるわけで、しかもそれを脱炭素としてやらなければいけないっていうところでいくと、いわゆる藻類の特性とか当然ですがユーグレナとしての特性というのも含めて必要になってくると思うのですが、やはりすごく難しさはありますよね。

研究的な行き詰まりや、培養の難しさ、資金調達の難しさとか、そういったものがたくさんあると思うのですが、阿閉さんとしては、何が一番難しい、悩ましいと感じられるのか、伺いたいなと思います。

阿閉

そうですね、難しさという表現が、マッチしているかどうか分からない部分もあるのですが、藻類の中の「ユーグレナ」と呼ばれるグループの中の、「ユーグレナグラシリス」と呼ばれる種を、今、我々は主に活用しています。

我々はこの「ユーグレナグラシリス」に一定の可能性があると見ているわけなんですが、一方でそれを絶対視しないということに、常に重きを置いています。
「ユーグレナ」についての知識や培養技術などを積み重ね、専門性を深めていく過程で、自分たちの研究が絶対である、自分たちの素材が唯一無二であるというふうに、錯覚してしまうこともあると思います。

二酸化炭素の削減のような気候変動への対策など、今までに実際に実施されているもの、まだされていないもの、まだ誰の頭にもないようなものを含めて、あくまでもこの「ユーグレナ」で何か解決しようというのは、一つの方策に過ぎないと。

ユーグレナ社は、ユーグレナ社であるがゆえに、絶対に「ユーグレナ」でやらなければいけないかというと、そうではないという認識でいる必要があると私たちは思っています。

何をお伝えしたいのかというと、目的は社会課題の解決なのであって、「ユーグレナ」で解決することが目的にならないようにということが、重要な考え方ということです。自分たちの技術、自分たちが研究してきたもので何とかしたい、ではなくて、それが本当に社会課題の解決に役割を果たさないのであれば、別の解決方法を探ることを一番の優先順位に置くべきであるというふうにユーグレナ社は考えているんです。

この点において、「ユーグレナ」の可能性があると思えるからこそ研究が続いているわけであって、他に可能性がよりあるものがあれば、これまでやってきたことに固執せずに取り組んでいく必要があります。

岡本

これまでやられてきたことに固執せず、課題解決という目的を考える、いやあ、ものすごく考えさせられますね。

しかも、当然、ビジネスとしてもやらなければいけないっていうものがあるわけじゃないですか。研究者としての探究心と、一方ではやはりマネタイズをしていかなければいけないということがあり、かつ、今まではただ売れればよかったというものが、ある意味、資本主義社会のあのベースにある考え方だったと思うんですけれど、今はそれに加えて、地球環境も考えなさい、社会にどうインパクトがあるかも考えなさいということも同時にやらなければいけないという。
本当に難しいことだと思って、今、伺っていました。

自分自身のビジョンや成し遂げたいことを明確にし、
その大きな目標のために、自分の専門に固執するのではなく、
知識を深めることに抵抗がない精神性があると良いと思います。

岡本

同時に、お話をお伺いしてきて、ふと感じたことに、
当時10代の阿閉青年が、こういう本があるから読んでみたらというところからご自身のキャリアの道標を得てという流れがありましたが、今回、このインタビュー記事を見ていただいている方々は、学校の先生方が多いのですが、学校教育の現場でも今、環境問題に対する解決テーマを子どもたちに提供しながら探究の学びを深めていくことや、高校生とかであれば、キャリア教育として、自分の将来を考えさせる取り組みがなされている中で、生物の観点から、食料やエネルギー問題等の解決に取り組まれているユーグレナ社として、これらの学びを、学校でどのように子どもたちに取り組ませていけるかというヒントがもし何かあれば、阿閉さんからメッセージを送っていただけるとありがたいなと思います。

阿閉

はい、非常に恐縮ではありますが私が当時、恩師からいただいた言葉を借りて、「正解のない問いを立て続けること」ではないかと思います。

学校では、一つの正解を前提に、これが正解でこのように答えようというものが、流れとしてあるかと思います。 しかし、私たちは、これまで誰もやったことがない、どうなるかも分からないことを目標として打ち立てて、ビジョンを描いて共有していますが、ここには絶対的な正解はありません。

現状に対する問いを立て続けて、そこから出てくる仮説をもとに、こういう世界が描けたらいいよねっていうような力を、学生のみなさまにもぜひ身につけていっていただきたいと思っています。
そのベースにあるのは、やはり一つの解ではなくて、様々な見方、様々な答え、絶対的な正解のない問いが常に存在していて、それに向かって、何か明快な答えというものがないなりにも、自分自身はこうしたい、こういう世界にしたい、ということが打ち出せるような、導きではないかと思います。つまり、1つの答えを指し示すのではなく、考え方の動線を引いて、あとは自分で考えてもらう、そういうような教育かも知れないと思っております。

岡本

今の子どもたちは、このコロナ禍の3年間の中で、実体験が随分減ったりしていて、当たり前なんですけれど、動くことで学べること、教科書や屋内での学ぶだけではなく、外に出ることによって、五感を刺激されたりして学べることはものすごく多くて、そちらも非常に大切なことだと思うんですよね。

その中で、最近の子どもたちによく感じられることですが、答えを待ってしまうことが多く、本来の意図とは少し離れて社会に浸透してしまった、辛いことあったら逃げてもいいんだよという感覚も含めて、今、阿閉さんがおっしゃったように、答えのないことに対して、自分でビジョンを描き、進んでいける力は本当に重要だと、私も共感します。

ちなみに、今後、このインタビューを見ていただいた先生方が、ユーグレナ社のことを子どもたちへの話題にして、かつての阿閉少年のように目標を持ち、大学、修士、博士へと進んだのち、ユーグレナ社の門をたたいて、出世なさった阿閉さんの下に入ってくることがあるかもしれませんが、その時に自分たちのメンバーとしてなってくれた今の子どもたちに対して、今どんな能力を身につけるべきなのか、
当然、学問的知識も必要だと思いますし、決して生物だけではなくて、それ以外の専門な知識や視点、それ以外のもの、大学受験に関係がないもの、そういったものも含めて、どんな能力を身につけてもらいたいのかお伺いできますか?

阿閉

あくまで個人の見解ですが、知識面で何かをこれを知ってないといけないということは、極論で言えばないと思っています。
何でも知ろうと思えば知ることができる、情報の多い時代ですし、知識を深めることに抵抗がないような精神性であれば良いと思います。自分の専門に固執して、専門以外は分かりません、というのではなく、なんでも一から勉強する姿勢。自分自身のバックグラウンドを活かすことを目的するのでなくて、別のもっと大きな目標のために学ぶこと、自分の専門性を広げることが、過程でありプロセスになれば良いと。

自分自身の世界観、ビジョンや自分自身が成し遂げたいことがきちんと明確になっているということが、一つ、大事なポイントなんだろうと思います。

それは何か植え付けられるものでもないし、何か絶対的なものがあるものでもないと思いますので、自分自身で目指すべき世界か、なりたい姿というのを見つけられている人はいいなと思うということですね。

岡本

植え付けられているというものではないというのは、いいですね。

でもそれって自発的に動かないとなかなか見つけられないし、よく言われるんですけれど、日本人の場合は、どうしても与えられることに慣れてしまう、小さいうちから、この宿題をやりなさい、座ってこれをやりなさい、ある時期になったら部活をやりなさい、部活もこの中から選びなさいっていうことで、自分の中のカテゴリーを与えられて、高校時代まで進んでいってしまって、大学に行ったらいきなりフルオープンで自分で考えてくださいねと言われてしまうわけなので、どうしても学校の先生としても難しいところはあると思うんです。

言わないとやらないし、発達心理学的にも能力的にも、やはり、言って、型を作らなければいけないということがあることは、一方ではもちろん理解しているのですが、もう一方で、やはり自分の頭で考えて、自分で行動する、その失敗から学んで、またブラッシュアップしていくという、そのステップアップということが重要で、阿閉さんご自身も、おそらくそういう部分がしっかりコアにあって動かれているのだなと感じまして、お話を伺っていて、そうだよなと、自発的に動かないと自分で取りに行けない、自分で種をまけないなと感じました。

阿閉

なりたい自分や、なっていってほしいビジョンを持っている人の中には、やはり植え付けられてというか、刷り込まれて何となく思い描いている方も場合によってはいらっしゃるのかなと思います。
でも何か大変な思いをした時に、自分自身で見つけたビジョンをもっていることが、今一歩踏みとどまれる、堪えてでもやり切るメンタルには重要なのかなと思っています。

ビジョンを自分で獲得して、自分で考えて行動する方がハードかもしれないですが、当人は存外そうとは思わなかったり、そんな経験によって、成長であったり、次の機会に恵まれると思っています。
逆に、ビジョンがなく、経験の蓄積が少なくまとまってしまう方が、一見楽にも見えるかもしれないですけど、そうしている間に大きく開いてしまう差を埋めるにはゆくゆく大変なのかもしれないと思います。

岡本

いや本当にね、今の、最後まで逃げないでやり切るという力って、やはり当たり前ですけれど大切なことだと思うんですよね。

例えば、メジャーリーグの大谷選手もまさにそうだと思うんですけれど、目的を達成するために、無理だって言われているものを、自分が「やりたい」というその熱量を持ってやっているので、無理だと思われていた投打両方の領域でトップクラスかつ、さらにそのトップにいる精神というものは、無理なら、辛いなら、逃げていいと言われても、自分は逃げないんだという気持ちを持ってやっているからだと思うんですよね。

そして、スポーツの領域から見ていると、みんな、そうだ、すごいな、と言うんですけれど、でも自分事になると、嫌だったら逃げていいんだよと言われてしまうとね、いやそれだとなかなか大成することはきないよね、成功する確率って減ってしまうよねということを、今お伺いしていて、大谷選手のことを思い浮かべてしまいましたが、本当に、その通りだと思います。

阿閉さんの最後のメッセージは、子どもたちに重要なテーマで、学びの中というより、人間としてのコアな部分として、大切なところだなと本当に感じました。

日本経済が今から本当に大変なっていくであろう中で、ぜひ、ユーグレナ社の皆様が、ソーシャルインパクトとして更に世界に打って出ていかれると思うので、大切な企業として、今後も応援していきたいなと思いますし、今日これを聞いて見てくださった先生方にも、ぜひ面白い書籍の紹介をしていただいて、それこそ、出雲社長の書籍もぜひ読んでいただいて、10年後20年後にユーグレナ社の門を叩いて、阿閉さんの下で研究をしてくれている子どもたちが出てくれるとすごく嬉しいなと思いました!

阿閉

笑。ありがとうございます。

岡本

阿閉さん、今日は本当にありがとうございました!

 

阿閉

こちらこそ、ありがとうございました。

Today’s Expert

阿閉 耕平 ATSUJI Kohei

株式会社ユーグレナ R&D企画室 主任 1991年愛知県生まれ。
筑波大学生命環境学群生物学類卒業。
同大学院生命科学研究科生物科学専攻博士前期課程(修士)を修了。br>2016年より株式会社ユーグレナに勤務。先端科学研究課 主任研究員等を経て、2022年よりR&D企画室 主任。
2018年より理化学研究所 微細藻類生産制御技術研究チーム(現、藻類資源アップサイクル研究チーム)客員研究員を兼任。
2020年に多糖類系バイオマスプラスチックの社会実装を目指す共同検討事業体「パラレジンジャパンコンソーシアム」の設立に携わる。
同コンソーシアムの代表役員を兼務。

Interviewer

岡本 弘毅 OKAMOTO Koki

教育のソリューションカンパニー、株式会社エデュソル 代表取締役。
特定非営利活動法人子ども大学水戸 理事長。
一般社団法人ロボッチャ協会 代表理事。
世界に羽ばたく「倭僑」の育成のため、従来の教育だけではなく、STEAM教育やSDG’s教育(ESD)、グローバル教育を中心に、3歳から社会人までの幅広い年齢にあわせた、様々な教育プログラムを提供している。また、子どものための大学を設立し、累計10,000人を超える学びの場を提供している。 2020年、株式会社電通、株式会社TBSホールディングスとともに、JVとして株式会社スコップを設立、実践的想像力を育むオンラインスクールSCHOP SCHOOLを開校。